サイトが木陰でよかった。
ペグを打ち直すのはこれで何度目だろう。
あとから来た家族連れはとうにテントとタープを張り優雅な時間を過ごしている。
私はというと、タープを張るのに苦戦していた。
動画をみながら、なんて軽く考えていたのが間違いだった。
電波状況は悪くない。
けれども動画がすぐ停止してしまう。
テキストサイトを探すが、コレもいまいちわからない。
夫の言葉がリフレインする。
「タープの張り方だけはみときね」
テントが簡単に貼れるので、ものすごく甘く見ていた。
タープを張らねば、テントが張れない。
今度こそは完成!とも負った瞬間に、ポールがぱたんと倒れる。
失敗した。お腹すいた。
浮かぶのはネガティブなワードだけれど、
そこには後悔がなく、思わず笑いだしてしまいそうだ。
失敗することでさえ、楽しくて仕方がない。
早くビールが飲みたい。
あの最初の一口が待ち遠しくてたまらない。
これがソロキャンプなのか。
誰かと一緒だとつい、
待たせてはいけない。早くしないと。
と、ついつい焦ってしまう。
人の目を気にする。
人に迷惑をかけてはいけない。
私はそれがずっと必要なことだと思っていた。
常に判断に誰かの目が合って、
正解か否かを判断しようとしてしまう。
がちがちになって結局気疲れして終わる。
あー。そら、人といると疲れるよなあ。
ペグの手が止まる。
向こうに見える空は青い。
がんじがらめにしてるのは、わたしなんだ。
私ってなかなかめんどくさい奴だ。
じゃあさ、どうしたらいいんだろう。
心もとなげに、ポールが震える。
風が吹いた。
また別のポールが倒れる。
ああ、そうか。
ポールにこだわるからいけないんだ。
ちょうどいい場所に木が2本ある。
ロープをぐるりと結び付けた。
私は、つい出口は一つだと思ってしまうところがある。

さあ、ビールを飲もう。
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